導入
CQRS(Command Query Responsibility Segregation)とイベントソーシングは、アプリケーションの設計において強力な手法です。しかし、これらのパターンを不適切に実装すると、思わぬ落とし穴に陥ることがあります。本記事では、CQRSとイベントソーシングを実際の業務に適用する際に遭遇しがちなアンチパターンを取り上げ、具体的なコード例を通じて問題点を明らかにし、改善策を提案します。
教科書レベルの解説(アーキテクチャ / 実務設計)
重要な概念の整理
CQRSは、コマンド(データの変更)とクエリ(データの取得)を分離するアーキテクチャスタイルです。これにより、各責任を明確にし、スケーラビリティやメンテナンス性を向上させることが可能になります。一方、イベントソーシングは、状態の変化をイベントとして記録し、これを基にアプリケーションの状態を再構築する手法です。この2つのパターンは相互に補完し合い、特にドメイン駆動設計(DDD)との組み合わせで強力な効果を発揮します。
コード例(Python)
class User:
def __init__(self, user_id, name):
self.user_id = user_id
self.name = name
class UserRepository:
def __init__(self):
self.users = {}
def save(self, user):
self.users[user.user_id] = user
def get(self, user_id):
return self.users.get(user_id)
class UserCommandHandler:
def __init__(self, user_repository):
self.user_repository = user_repository
def create_user(self, user_id, name):
user = User(user_id, name)
self.user_repository.save(user)
コードの行ごとの解説
- クラスUserは、ユーザーの基本情報を保持します。
- UserRepositoryは、ユーザー情報を保存・取得するためのリポジトリです。
- UserCommandHandlerは、ユーザー関連のコマンドを処理するクラスで、ユーザーを作成するメソッドを提供します。
アンチパターン編
CQRSとイベントソーシングの実装において、よく見られるアンチパターンの一つは、コマンドとクエリを明確に分離せずに、同じクラスやメソッドで処理することです。このアプローチでは、ビジネスロジックが混在し、テストやメンテナンスが困難になります。
以下は、コマンドとクエリが混在した例です。
class UserService:
def __init__(self, user_repository):
self.user_repository = user_repository
def create_user(self, user_id, name):
user = User(user_id, name)
self.user_repository.save(user)
def get_user(self, user_id):
return self.user_repository.get(user_id)
上記のコードでは、UserServiceがコマンド(ユーザー作成)とクエリ(ユーザー取得)を同一のクラスで処理しています。これにより、将来的にビジネスロジックが増えると、クラスが肥大化し、責任が曖昧になります。
改善策としては、コマンドとクエリを別々のクラスに分けることが挙げられます。これにより、各クラスの責任が明確になり、テストやメンテナンスが容易になります。
まとめ
- CQRSとイベントソーシングの適切な実装には、コマンドとクエリの分離が不可欠です。
- ビジネスロジックが混在するアンチパターンを避けることで、コードの可読性や保守性が向上します。
- 実務においては、各責任を明確にした設計を心掛けることが、長期的な成功につながります。